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No. m0647
Viscose Journal Issue 04: Trans
5,500円(税込6,050円)

 
2021年にニューヨークとコペンハーゲンを拠点に始動したファッション批評誌。ファッション・アートスカラーでありキュレーターのイエッペ・ウゲルヴィグ(Jeppe Ugelvig)が編集長を務める。毎号特定のテーマを掲げ不定期に刊行する本誌は、それぞれ異なる本の形式を採用し、ジャンルを超えた思考を提案することで、ファッションにおける研究、制作、また批評の可能性を拡げることに挑んでいる。あらゆる領域、産業、場所の孤立化を拒みつつ、世界中の知的なファッションコミュニティを対象に発信する。また、研究機関や美術館などと共同で研究を進めることで、広告を掲載することなく刊行を続けている。 『Viscose』特別号となる第4号は、トランスジェンダーとファッションの間にあるさまざまな関係性を探求し、批評する。本書が問うのは相反する2つの質問である。一つは「トランスジェンダーにおけるファッション論とは何か」、そしてもう一つは「ファッションにおけるトランスジェンダー論とは何か」。ファッションビジネスの分野でその歴史と批評を研究し教鞭も取るアレックス・エスクラーピオ(Alex Esculapio)、クィア&トランス研究や美学理論、廃止論思想、ブラックネス研究を専門とするブラック・ノンバイナリー批評理論家であるチェ・ゴセット(Che Gossett)ら研究者を共同編集者として迎え、トランスジェンダーの美学と研究とともにファッション学に対し意義のある形で向き合い、ファッションそのものの裏側を形作ったトランスジェンダー史においてほとんど目に留められてなかった記録の発掘を試みる。世界中のトランスジェンダーないしクィアの作家、アーティスト、クリエイターによって書き下ろされたテキストを掲載し、未開拓な概念である「トランスジェンダーの文化的生産性」に対して可能性あふれるジャンルとして取り組んでいる。 この50年の間にトランスジェンダー・ファッション製品が生んだ歴史的あるいは現代的な場面を多数収録。ニューヨーク市を拠点とするデザイナーでありブックメイカーのリッサ・ホックバーガー(Rissa Hochberger)が手がけた本書の表紙は、クィアによる独立系出版の歴史を讃えているようであり、また切り離せばポスターにもできる仕様となっている。 本書は、2022年に「レスリーローマン美術館(Leslie-Lohman Museum of Art)」で開催されたドイツ人アーティスト、ロレンツァ・ベットナー(Lorenza Böttner)による野心的とも形容できる回顧展からインスピレーションを得ている。ベットナーはトランスジェンダーのアーティスト、パフォーマーであり、幼い頃に両腕を切断している。コスチュームやスタイルなどのイディオムやその多才な技術を通じ、性別と身体表現におけるボーダーへと切り込んだ。 トランスジェンダーの人生や表現にとって、ファッションは目新しいものではない。トランスジェンダーの人々が関わっていたかはともかく、むしろファッションにおけるテーマとして繰り返し考えられてきたものである。トランスジェンダーであるということはファッションの枠組みの中では一つの特性であり、現代史を通じて我々の性別に対する解釈をさまざまな方法で形作り、継続し、理解させたシステムなのだ。本書は、ファッション史がどれほどトランスジェンダーの文化的生産性やその美学から学んできたかをもっと広く考慮してもらうべく、哲学的、社会的、あるいは政治的など多様な視点からその系図学を書くという仕事の一歩目となる。 「トランスジェンダーの文化的生産性」とはいまだ不完全な概念であり、ファッション業界におけるトランスジェンダーの人々による様々な貢献だけではなく、現代社会の一現象として、ファッションが生まれるところの中心にトランスジェンダーがあったことも考えられるべきである。言い換えれば、トランスジェンダーが彼ら自身の手で自分の世界を作り出すための型を構成するものが、スタイルやドレスだという事実である。本書は、「トランスジェンダー」を名詞ではなく動詞としてアプローチすることによって、トランスジェンダー的感性の思索的、歴史的価値を高めている。この感性が、ファッション界と結びつき、参加し、活性化させる現象である。それは、着飾った肉体を創るものから壊すもの、イメージを消費するものからイメージそのものになるもの、服を着るものから作り出すものなのだ。トランスジェンダーをただ曖昧なコンセプトとして扱うよりも、知恵を生むためのポジショナリティ、あるいは批評的視点として有効に活用すべきであろう。 ニューヨークの「レスリーローマン美術館(Leslie-Lohman Museum of Art)による協力、ノルウェー、オスロの「ファッションリサーチ国際図書館(International Library of Fashion Research)」と「オスロ国立美術館(Nasjonalmuseet for kunst, arkitektur og design)」による提携、「ジョン・バートン・ハーター財団(John Burton Harter Foundation)」、「デンマーク芸術財団(Danish Arts Foundation)」、「ノルディック・カルチャー・ファンド(Nordic Culture Fund)」の援助により刊行された。172p 33x24cm ソフトカバー 2023 English.

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