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No. 8240
野上眞宏: Blue Tokyo 1968-1972
4,800円(税抜)

本書収録の約190点におよぶモノクロ写真は、「はっぴいえんど」(細野晴臣、松本隆、大瀧詠一、鈴木茂)結成前の1968年から解散を決めた1972年暮れまでの時期に撮影されている。

立教大学で同級の細野晴臣と遊び仲間だった野上眞宏は、細野との交流を通して、「はっぴいえんど」をはじめ、その後の日本のミュージックシーンを牽引することになるミュージシャンたちのレコーデングやライブ、楽屋での様子などを、プライベートに撮影した。野上がそこに居合わせ、しばしば撮影していたことで、当時まださほど注目を集めていなかった彼らの、極めて貴重なドキュメントが残されることになった。

はっぴいえんどのファンでもあるシカゴ大学のマイケル・ボーダッシュは、「この写真集に収められたイメージの静謐さに私は心を打たれた」と本書序文で綴っている。この一文は、野上がこの時代に撮った写真群のとてもユニークな魅力を私たちに気づかせてくれる。政治的にも文化的にも大きく揺れ動いていた1960年代末から1970年代初めにあって、野上は、この時代を象徴する激動や喧騒とは別の側面にある、価値や重要性を浮上させようとしているかのようだ。野上によって、静寂の中で繊細に捉えられた人々、そして街の姿に、私たちは出会うことになる。

本橋の裏通りを歩くカップル、人通りもまばらな早朝の表参道、映画館が幾つもある渋谷の東急文化会館(現・ヒカリエ)、六本木の夜のカフェ、ジュークボックスのある新宿のディスコ……、半世紀前の東京の街角の光景のどれもが、当時を知る者には懐かしさを喚起し、この時代にはまだ生まれてすらいなかった者にとっては、タイムトリップを誘う魅力的な細部を見せてくれる。

書名は1971年にリリースされたジョニ・ミッチェルのアルバム・タイトル《Blue》からとられている。この時代の野上は、憂鬱で、不安な毎日を送っていたという。ブルーな気分だからこそ、友人と街に出かけ、楽しい時を過ごそうとしていた。政治運動への参加も、将来を約束された企業への就職も選ばなかった野上にとって、写真家を目指しながら撮影された日々の記録は、見えない何かへの切望と抵抗の痕跡だったのかもしれない。

野上は1974年に渡米し、その後の30年近くをニューヨークで過ごすことになる。本書表紙写真は、渡米後1年半を経た1975年の11月に、ワシントンDC近郊の、ジョージタウンのカフェでくつろぐ著者。(publisher's description) 204p 23x24cm ハードカバー 2018 Japanese